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ESSAY

焼けつく太陽の下、摩托車は走る
 〜台湾・小琉球島

文・写真/Kazumi Serizawa
  image   ある日、台湾の詳細な地図に、「小琉球島」という名前を見つけた。台湾の南西にある、ものすごく小さな島だ。小さな琉球――。
  ロス・アンジェルスのリトル・トウキョウや、N.Y.のリトル・イタリーのような、沖縄人街があるのだろうか。それとも、フロリダの亡命キューバ人街、リトル・ハバナのごとく、薩摩藩に侵攻され逃げ出した琉球人が、異国の島にコロニーを築いたか。

image  妄想を膨らませながら資料を調べてみれば、もともと、「琉球」という名は、中国が台湾島と沖縄島の双方を指すときに使っていた名称だという。
  明朝の時代、中国は沖縄を「大琉球」、台湾を「小琉球」と呼んでいた。当時、琉球王国は、世界中と貿易する明朝にとって重要な存在だったから、台湾より小さくても「大琉球」。台湾は化外の地でしかなかったから、「小琉球」というわけだ。

  時代が変わり、台湾が中国に統治されると、「小琉球」という名は消滅したが、どういうわけか、ある小島に、旧名が残った。「小琉球島」の正式名称は「台湾省屏東県琉球郷」である。

image  壮大な想像は期待はずれだったが、小琉球島には訪れてみたい。 南部にある東港という港町から、フェリーで小琉球島に渡った。小さな港の前には、ホテルが何軒か並んでいる。リゾートホテルなんて洒落たものではない、ダイビング客や家族連れ向けのものばかりだ。宿泊するつもりでいたが、週末だからか、どこも満室だという。
  「摩托車」の看板が目についた。レンタルスクーターだ。日本では、免許は持っているが、車にもバイクにも乗らない。でも、宿泊するつもりで持ってきた大きなカバンをぶら下げて、炎天下を歩きたくはない。15年ぶりにスクーターに乗ってみることにした。

image   港を出てしばらく行くと、土産物店や小さい食堂がひしめく通りで、元気なご婦人たちが、発泡スチロール箱を並べて魚を売っていた。聞けば、彼女たちの夫が、その日の朝に釣ってきたものだという。
  小琉球の暮らしを支えているのは漁業だ。漁師の島だから当然、海の女神様=馬祖への信仰も篤い。島のあちこちに馬祖を祀る立派な楼閣の廟が建てられ、青い海と美しいコントラストを描いている。だがその海も、ときには危険なものとなる。厳しい自然と向き合ってきた島だからこそ、多くの廟を建て、神に祈ってきたのだろう。

  途中、「琉球香腸」という腸詰を屋台で買って食べた。サンドイッチのように、おこわの中に挟んで食べる。照りつける南国の太陽の下で食べる、ジューシーでスパイシーな味に、沖縄のオリオンビールが恋しくなった。
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